脳卒中の原因となる脳動脈瘤、頸部内頸動脈狭窄症、脳動脈狭窄症、急性脳動脈閉塞症をメスを使わず、 "血管の内側"から病気を治す治療法です。
X線透視(レントゲン)をみながら、血管内にカテーテルと呼ばれる直径が0.5mmから3mm程の細長い管を挿入して治療を行います。
クリッピング術や頸動脈内膜剥離術といった通常の外科手術と比較して、開頭や切開が不要であるため、患者さんの負担が少ない治療です。
手術時間も従来の外科手術と比べ大幅に短縮できます。
近年、脳血管内治療は心臓や末梢血管の血管内治療と同様に症例数が増加傾向にありますが、脳血管内治療は多くの特殊な治療機器、器具を扱うための高い技術が必要であり、専門のトレーニングを積んだ医師(脳血管内治療専門医、指導医)が治療を行います。
以下に代表的な三つの脳血管内治療についてご紹介します。
通常、脳動脈瘤の血管内治療は全身麻酔で行われます。
まず最初に直径2mm前後、長さ90cmのカテーテルを足の付け根の大腿動脈から首にある頸動脈まで進めます。
次にそのカテーテル内にさらに細い直径0.6mm、長さ150cmのマイクロカテーテルを通して頭の中の脳動脈瘤の中まで誘導します。
そして"コイル"と呼ばれる極めて細いプラチナ製の塞栓物質をこのマイクロカテーテルを用いて脳動脈瘤の中に詰め込み、脳動脈瘤内に血液が流れ込むのを遮断することによって治療します。
このプラチナ製コイルは柔軟でかつX線透視下(レントゲン)により見ることができます。
コイルには多くの種類があり、脳動脈瘤の大きさや形状にあわせて最適なコイルを選択して使用します。
破裂脳動脈瘤、未破裂脳動脈瘤どちらもコイル塞栓術で治療できます。
通常、頚動脈狭窄の血管内治療は局所麻酔で行われます。
まず最初に直径3mm前後、長さ90cmのカテーテルを足の付け根の大腿動脈から首にある頸動脈の狭窄部位(血管の狭くなった所)の手前まで進めます。
次にこのカテーテルの中を通してバルーンカテーテルを狭窄部まで進めて狭窄部を拡張します。
続いて"ステント"と呼ばれる金属のメッシュでできた円筒状の管を誘導して狭窄部に留置します。
このステントは自己拡張能力があり、血管内に留置すると即座に拡張し狭窄部を拡げます。
ステント留置後にまだ狭窄が残る場合は、再びバルーンカテーテルを用いてステントごと狭窄部を拡げます。
バルーンで拡張を行ったり、ステントを留置する際に、狭窄部のプラーク(血のかたまり)がはがれて眼動脈や脳動脈へ飛んでいく危険性があります。
それを防ぐ目的で、フィルターを治療する部位の下流にあたる血管内にあらかじめ進めておいてから治療を行います。
発症からの時間が4.5時間以内の急性期の脳動脈閉塞症に対してはtPA(血栓溶解剤)静脈投与による治療が最初に行われますが、何らかの理由でtPAを投与できない患者さんやtPAを投与したけれども症状改善が見られない患者さんに対して、血管内治療が行われることがあります。
急性脳動脈閉塞では脳梗塞になってしまう前の脳虚血の状態のうちにできるだけ早く血栓(血の塊)を取り除いて、脳血流を再開させることが必要だからです。
通常、急性脳動脈閉塞症の血管内治療は局所麻酔で行われます。
まず最初に直径2ー3mm前後、長さ90cmのカテーテルを足の付け根の大腿動脈から首にある閉塞部位にアプローチできる頚部の血管(内頸動脈もしくは椎骨動脈)に進めます。
そしてこのカテーテルの中に血栓回収デバイス(血栓吸引カテーテルやステントリーバー)を通して治療を行います。
従来はマイクロカテーテルを閉塞血管まで誘導してウロキナーゼ(血栓溶解剤)を流して血栓を溶かす方法や、マイクロバルーンカテーテルで血栓を破砕する方法により血管を開通させていましたが、新しく2010年にMerciリトリーバ(らせん状のワイアーで血栓を絡め取って回収する)、2011年にPenumbra(ストロー状のカテーテルで血栓を吸引して回収する)、そして2014年に血栓吸引ステントリーバーが本邦で認可されて使用できるようになりました。現在ではPenumbraのシステムに代表される血栓吸引カテーテルとステントリーバーを併用して血栓回収を行うことが一般的になっています。
脳梗塞を発症した後、4.5時間以内に行う血栓を溶かす治療です。
病院到着後に検査をした上で治療を開始します。
脳卒中の症状 >> が出たら、すぐに受診、又は救急車を呼んで下さい。
※致命的な合併症を起こすることもあるので、全員に行えるとは限りません。